正しい箸の持ち方

2009.6.24更新

 食事をするときに、失礼ながら周りの人の手元を観察していると、我流のお箸の持ち方をしている人が意外と多いのに驚きます。本人は正しい箸の持ち方をしていると思っていても、実は一見それらしい箸の持ち方になっている人が殆どである。この傾向は最近の若者ということではなく、全ての年齢層に当てはまる。親を見て子は育つと言いますから。
 テレビで、グルメ番組が数多く放映されていますが、違和感を覚える箸の持ち方をしている人が数多く見受けられ、メディアの公共性や社会への影響力を考えると少し悲しい想いがする。

 箸の持ち方が良くない人は、箸をフォークのように食べ物に突き刺したり、箸ですくうようにして食事をしている人をよく見かける。箸使いの基本形は食べ物を摘んで口元に運ぶ所作が美しいこと。

 外国人から見れば、私たちは箸文化の「箸の持ち方」の日本代表になるし、子供からすれば正しい箸の持ち方の手本になるから、箸とともに責任もしっかり持ちたいものだ。

 正しい箸の持ち方をすれば、箸先の可動範囲が広く、力強くて美しい箸さばきになる。これは裏を返せば無駄な力を使わないで軽く持つだけで、見た目も綺麗で疲れず、楽しく食事をすることが出来る。
 
    正しい箸の持ち方  いろいろな箸の持ち方  箸の操作力の測定方法  食器を持ちませんか

 
 
「正しい箸の持ち方」の定義

 ・摘む、開くなどの動作が機能的で安定感がある
 ・昔から伝わり、伝統的で美しい
 ・誰でも持ち易く普遍的である

 
 

 手前の1本(静箸)は親指の付け根()と、ピンポン玉を握るように曲げた薬指に渡した箸のほぼ中間を親指で押さえて固定(3点支持に)して持ち、もう1本(動箸)は親指と人差し指と中指の3指でつまむようにして持つ。薬指を曲げることが大切(薬指と箸との角度が鈍角になること)で、これにより静箸が安定する。また、親指の付け根()は、箸を付け根の奥までしっかり付けた方がより安定する。
下記に示す、いろいろな箸の持ち方(4b)のように薬指等をすらりと伸ばして薬指と箸との角度が鋭角になると、静箸が薬指から滑り落ち易くなり不安定になる。
中指は静箸には触れず、小指は薬指を下支えをすることでより強い箸使いにも対応できるようになる。
この方法が一番正しい持ち方で、箸先の動作範囲が広くて力も入れ易く、一番合理的な持ち方といえる。また、他の綱渡り的な持ち方に比べ、一番簡単な持ち方ではないでしょうか。

また、静箸の安定度を確かめるには箸先()点を左手で揺り動かし、どの方向にも箸がしっかり固定されているかどうかを試してみればわかる。多くの人が正しいと勘違いしている持ち方(4b)の持ち方では、箸先を指で開く方向に引っ張った場合はしっかり固定されているが、箸先を指で閉じる方向に押した場合は簡単に箸が薬指から滑り落ちるのが分かる。

注 : 箸の持ち方によっては固定されてなかったりきちんと動かせてなかったりする場合があるため、ここでは便宜上、身体に近い手前の方の箸を「静箸」、身体から遠い方の箸を「動箸」と呼ぶ。


ポインタを上図の上へ

 正しい箸の持ち方を分解してみると、手前の1本(静箸)をそのまま引き抜いて残った動箸(C)部分は、鉛筆(筆)を持ったときと全く同じ形である。つまり鉛筆とお箸の持ち方は一心同体である。

しかし、最近(20数年前から)は鉛筆の持ち方も徐々に変わってきた。太いグリップのシャーペンが広まり、筆圧が必要なカーボンコピー紙でのボールペンの多用で、筆記具を強く握り締める持ち方に変わりつつある。元来毛筆や万年筆では軽く握る方が滑らかに筆を走らせることが出来る。

 正しい箸の持ち方は、上図のように広い範囲にわたり滑らかに、そして敏速に動かすことが出来、また箸の操作力が大きいので通常の箸使いでは余裕を持って軽やかに操作出来る。



 いろいろな箸の持ち方

写真右隣の操作力は私自身が慣れない箸の持ち方で測定した値なので、個人差を考慮願います

4a
操作力

摘む 600g
開く 230g
 この持ち方が正しい箸の持ち方

許されるものなら、この持ち方を推奨します

4b
操作力

摘む 590g
開く 90g
ちょっと見た感じでは正しそうに見え、この持ち方をしている人はかなり多い。
静箸(手前)を支える薬指と小指はあまり曲げずにすらりと伸ばして持つためきれいに見えるが、これでは薬指と箸との角度(A)が鋭角になるため薬指から滑り落ち易くなり、静箸が安定しないし押し開く力(魚を解す場合等)が弱い。動箸の持ち方は問題なし。
この箸の持ち方は、中指が静箸を固定することと動箸を開くこととの二役こなしている。

4c
操作力

摘む 130g
開く 110g
静箸(手前)の支えを薬指の指先(腹)に乗せる持ち方

4bの持ち方では静箸が不安定なので指先に乗せるようになったのではないかと思われる
箸の動きとしては問題無いが、操作力が弱い

4e
操作力

摘む 250g
開く 50g
4bの持ち方から派生。
静箸は中指と薬指の2本で支え、動箸が人差し指と親指の2本のみで操作

箸の動きとしては問題無いが、これも操作力は弱い

4f
操作力

摘む 190g
開く 140g
4aの持ち方から派生
中指(手前)と薬指が干渉しないように中指を大きく曲げて、動箸を人差し指と中指で挟む持ち方

箸の自由度は正しい持ち方と変わらないが、中指を曲げてしまうと操作力が少し弱くなってしまう

4g
操作力
摘む 130g
開く 130g
静箸(手前)が親指の付け根から離れており、腕に対する箸の角度が鋭角(箸先が手前を向く)になる持ち方

軽やかに箸を動かせそうではあるが、これも操作力が弱い

3a
操作力

摘む 550g
開く 160g
静箸(手前)の支えの一端が中指に変わり、動箸は親指と人差し指だけで挟んで持つ持ち方で、人差し指の上に乗せているところがポイント

静箸はほぼ安定しているが動箸は2指なのでやはり押し開く力が弱いです

3b
操作力

摘む 130g
開く 110g
動箸、静箸(手前)ともに指先の腹に乗せる持ち方

人差し指はほとんど使わない
箸の操作力が弱い

3c
操作力

摘む 120g
開く 30g
2本の箸を中指に乗せる持ち方

2本の箸間隔は平均的に言って狭い人が多い
箸の操作は極めて難しい
箸を持ってみても、正直言って動作機構は良く分からない
女性に多い持ち方

3d
操作力

摘む 110g
開く 160g
2本の箸を接近させて、中ほどでクロスさせる持ち方

手の動きとしては開く動作で食物を摘むのでどうしても操作力が弱く、大きなものを摘む時には2本の箸に角度が付いてしまうので食物が逃げて掴み難い

5a
操作力

摘む 140g
開く 260g
静箸(手前)の支えは薬指+小指の2本に接し、動箸は親指+人差し指+中指の3本で持つ。つまり5本全部の指を使う

これも正しそうに見えるが、指が多すぎて動きに制限がある。薬指を曲げないため静箸を安定させるには小指を補助に使わざるを得ないのだろう。

5b
操作力

摘む ?0g
開く ?0g
幼児に多い持ち方

箸の操作は極めて難しい
フォークの代わりというところでしょうか

5c
操作力

摘む -g
開く -g
静箸(手前)の支えは小指の指先で、動箸は薬指で主に持つ。5本の指全部を使うが、動かし難い2指をあえて使っている

指先に乗せているので操作力は弱くならざるを得ないが、それなりには使える


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箸の操作力の測定

(木下式簡易測定法)

 箸の操作力を正確に測定するにはロードセル(荷重計)を用いなければならないが、専用の測定器は無いだろうと思うし、もし有ったとしても高価である。
下記のような木下式簡易測定法なら300円程度の費用で力を測定することが出来、精度は箸の操作力を測るのには十分である。
用意するものは家庭用の秤(1kg〜2kg)、紐(2本の箸先の間隔を調整。上から吊るすのでどんな紐でも可。写真では上部の青色の紐)、糸(ちょっと太めの糸で十分。写真は見やすいように太くて赤い紐を使っている)、針金(滑車の軸に使用。太さは1.5〜2.0mmくらいが使いやすい)、滑車2個(網戸用戸車を分解して利用、写真は13mm径)、重り(ペットボトルに水を1〜2リットル程度入れても代用出来る。写真は1kgの重錘)

原理 : 秤の秤量と同じくらいの重りを乗せ、箸の操作力で上下2個の滑車を介して重りを持ち上げ、その時の秤の目盛りを読み取る。
(重りを乗せた時の秤の読み取り値)−(箸の力で持ち上げた時の秤の読み取り値)の1/2が箸の操作力になる。従って、1kgの秤と重りを使った場合は最大で500gまでの操作力が測れる。
滑車2個を使わずに直接重りを吊り上げたのでは、腕の力の影響で箸の操作力は正確には測れない。

測定装置全体図 摘む力の測定 開く力の測定


箸の操作力の測定

 いろんな人の食事姿を観察していると、食器を持たないで食事をする人が結構多い。お箸を使って食事をしようとすれば多少なりとも食べ物をポロポロと落としてしまう。洋食でのナプキン等もそれを想定しているのであろう。和食でそれを防ぐには食器を持って食べ物を自分の口に近づけるか、ご飯茶碗で落ちるのを受ける等の対応策をする必要がある。
食器を持たない食べ方で食べ物を落とすリスクを少なくするには、食べ物が入っている器に顔(口)を近づけるように前屈みにならざるを得ない。何か四足動物みたいですね。私もその一人と言えそうである。
そんな中、背筋を伸ばして美しく食事をしている人も数十人に一人くらいは居られるようである。

 日本でのお箸文化は、歴史を遡ると、畳(板間)の上に置かれたお膳に小振りの器に料理を盛り付けて食する形態であった。膝先に置かれたお膳の上にある料理は距離が離れていて、食べ物を口に運ぶには食器を持たなければ無理が生じることになる。明治以降?西洋文明の浸透で徐々にテーブルで食事をするようになり、近年では給仕の手間を省くため大きな器に一人分を盛り付けて食事を提供するようになったり、一口では食べ切れない大きさの料理が出てきたりして、お箸文化にひずみが生じているのだと思われる。
ラーメン等は洗面器のような大きな食器で提供されることが多い。本来の日本文化はわんこ蕎麦のようなお椀でお代わりをするのが適しているのだろうが、人件費等を考えると難しい状況である。

 お国が異なれば、食器を持っての食事はマナー違反になるところも有るので何とも言えない部分もある。

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