ガス充填包装の基礎知識

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ガス充填包装(ガス置換包装)とは
 ガス充填包装とは、食品等を不活性ガス中に保持し、空気中の酸素による好ましくない変化を阻止しようとする包装である。
 空気中の酸素は食品にとってありがたくない存在であることが多い。油脂、ビタミン、色素、香気成分などの酸化は、多くの場合、空気中の酸素との結合によるものである。また、カビや害虫も、酸素の存在によってその生命が維持される。そこで、食品の雰囲気から酸素をなくすことによって味覚、栄養価、色調、香りなど、食品として不可欠な要素を失うことなく、できたての新鮮さを保持することができる。また、カビや害虫に対する食品衛生の面からも安心できることになる。ガス充填包装の保存効果を列記すると、
@油脂成分の酸化防止
AビタミンCなど、有効成分の保存
B香気成分の酸化による異臭・変臭の防止
C色素の酸化による変色・退色の防止
Dカビ、好気性菌、酵母による腐敗・発酵阻止
E虫害の防止
などである。
 ガス充填包装の歴史は古代中国にさかのぼる。古代中国では、食品容器内で油を燃焼させて酸素を消費し、食品を長期保存させたという記録がある。また英国では、およそ150年前に、びん牛乳のヘッドスペース部分を二酸化炭素(炭酸ガス)で置換して保存性を向上させるという特許が提出されている。このように、ガス充填包装は原理的には古くから知られていたもので、決して目新しいものではない。また、真空包装※1、脱酸素剤包装※2も空気中の酸素との遮断ということで基本的考え方は同じである。
しかし、最近になって特にガス充填包装の普及が著しく、広く採用されるようになったのは、食品にはまったく手を加えずに、包装だけで保存性を高められるという点に大きなメリットがあるためであろう。また、新鮮さ、出来立て風味を求める消費者の要望に応えるべく、チルド保存、無菌包装との併用など、包装による高度な保存技術の向上も大きな要因である。
 しかし、ここでガス充填包装さえすれば、すべての悪変に対して安心できると考えるのは誤りである。たとえば、酸素のない方がよろこぶ嫌気性菌による腐敗(病原性大腸菌O−157も酸素のない状態でも増殖する)、酵素の作用による自家消化、吸湿・乾燥などの防止に対しては、その効果はほとんどない。裂きいかやしらす干しなど、食品の種類によっても酸素がなくなると変色したり、香りが悪くなったりするものがある。また、不活性ガスの選択を誤ったり、置換率が不十分である場合には、期待した効果は得られない。ガス充填包装を実施するにあたっては、包装対象品についての悪変の形態、包装方法、フイルムの選定などについて十分な検討を要する。

※1 真空包装
袋に内容品を充填し、真空下で密封シールするのが真空包装である。袋内の空気を除去するので、内容品にフイルムが密着する。ボイル殺菌・レトルト殺菌に適している包装形態である。空気中の酸素の影響による悪変を防止できる。ただし、フイルムの酸素透過度によって袋内に透過する酸素量が決まる。
※2 脱酸素剤封入包装
 内容品とともに脱酸素剤(酸素吸収剤)を同封し密封するもので、一定時間内で袋内酸素は0.1%以下になる。外気から透過してくる酸素も脱酸素剤が吸収するので、常に低酸素状態が持続するのが真空包装やガス充填包装とは異なる。特別な装置は必要がないので手軽に採用できる方法である。

ガス充填包装に使用されるガスの種類
 不活性ガスとしては窒素ガス(N)、二酸化炭素(炭酸ガス、CO)、特殊な用途として酸素ガス(O)があり、単体もしくはこれらの混合ガスが、目的によって使い分けられる。表1に各ガスの基本的性質を示した。
窒素ガス
 窒素ガスは、体積比で空気中78%を占めており、無味・無臭・無色の、ほとんど反応性のない不活性ガスである。もちろん無害・無毒である。ガス置換包装では、空気中の酸素を除去するのが目的で、油菓子、ナッツ、削り節、コーヒー、日本茶など、主として酸化防止、変退色の防止、香気保存などに使用される。静菌作用はないので、窒素ガス単体ではカビ、腐敗防止効果は低い。
二酸化炭素ガス(炭酸ガス)
 二酸化炭素は、水にも油にも溶解し、水溶液中においては炭酸によって微酸性を呈し、食味に影響することがある。しかし、窒素ガスにはない静菌・防虫作用があって、好気性菌、カビ、害虫などの発生を抑える力がある。二酸化炭素ガスをもちいたものは生肉、ウィンナーソーセージ、和・洋生菓子、半生菓子、豆類、穀類などのカビ、腐敗、虫害防止に効果を発揮する。袋内の二酸化炭素濃度が30%で一応の効果があり、50%以上ではほとんどのカビは防止できる。
酸素ガス
肉のきれいな赤色は、酸素と結合した、オキシミオグロビンによるもので、鮮魚、生肉のきれいな赤味を発色させるために酸素を封入する。
混合ガス
二酸化炭素は、窒素ガスに比べて、プラスチックフイルムをよく透過するので、二酸化炭素100%置換では袋外にガスが逸散して真空状態になりやすい。そこでフイルムを透過しにくい窒素ガスと、二酸化炭素ガスの混合ガスを用いて減圧状態になるのを防止する方法を使用することも多い。また、酸素ガスで肉類の発色をきれいにし、二酸化炭素ガスで保存性をだすために酸素ガス+二酸化炭素の混合ガスを用いることもある。

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表1.充填用ガスの基本的性質

  二酸化炭素 窒素ガス 酸素ガス
分子式 CO
分子量 44.01 14.0067 15.9994
比 重 1.529 0.972 1.1053
溶解度
水20℃
大豆油
 
0.878
1.018

0.0155
0.0860

0.0310
0.141
空気組成 0.03% 78% 21%
性状 無色・弱い刺激臭
わずかに酸味
無味・無臭・無毒 無色・無臭
活性気体
使用目的 静菌作用 酸化防止 発色

 ※大豆油に対する溶解度は30℃のBunsen吸収係数

表2.各種食品のガス充填包装例

食品 ガス組成 目的(防止)
納豆 早熟成
凍り豆腐 酸化
パン粉 CO、CO+N 発酵、カビ
ナッツ類 、CO+N 酸化、虫害
削り節 変色、香り
チーズ CO、CO+N カビ、酸化
粉乳 、CO+N 酸化
ハム類 +CO 変色、腐敗
ウインナー CO、CO+N カビ、腐敗
半生菓子 、CO+N カビ
スナック 酸化、虫害酸化、虫害
緑茶 香り、ビタミン
コーヒー 香り
油菓子 CO、CO+N 酸化
弁当 CO、O+CO カビ、腐敗
鰹たたき +CO 変色、腐敗
はまち +CO+N 変色、腐敗
まぐろ +CO  変色、腐敗
牛肉 +CO 変色、腐敗


ガス充填包装の方法
ノズル式
 ガス置換包装の簡易タイプで、ガスがでるノズルに袋を差し込み、スポンジ状のもので袋の口の部分だけを押さえて脱気する。袋内が密着した状態で、弁の操作により不活性ガスを送り込み、ノズルを抜いた瞬間に密封シールする。不活性ガスは袋内に送り込む量だけでガス消費量は少なくてすむ。足踏み式、エンドレスベルト式などがあり、設備費は安い。
チャンバー式
チャンバー(密封式容器)の中に数個の袋をセットし、チャンバー内部全体を脱気した後、そのままの状態で不活性ガスを送り込み、シールする。脱気時、ガス封入時ともに袋内外は同圧であり、フイルムが内容品に密着することはない。一般には各袋の口にノズルを差し込み、ガスが十分に袋の中に送り込まれるようにする。チャンバー内全体を真空にするので、ガス置換率は非常によく、酸素濃度0.1%以下にまですることができる。ピロータイプの包装機とチャンバー式包装機を連動したものも多く使用されている。
ガスフラッシュ式
 ピロータイプ包装機にガスフラッシュ装置をセットしたもので、センターシールされた筒状フイルムの内部に内容品が送り込まれ、同時にガスも吹き付けて筒内空気を追い出して不活性ガスだけにした状態でカットシールする。ガスを吹き付けるだけなのでカステラのような多孔質な内容品の場合は置換率が低くなる。しかし、包装機、包装条件によっては酸素濃度が0.5%以下にすることもできる。

包装フイルムの選択
 包装材料にはKコートフイルムなどのガスバリヤー性に優れたものを使用する。二酸化炭素ガスはフイルムを透過しやすいので、袋内の充填ガスが外部に逸散して、真空包装のようになることがある。これを防止するためには、窒素ガスを混合したり、EVOH系、アルミ複合などのハイバリヤーフイルムを使用する。表3にガス充填包装に使用できる主なフイルムを示した。

表3.代表的ガス充填用フイルム

フイルム ガス遮断 用途例
OPP/CPP × ガス充填は不適
PET/LLDPE × ガス充填は不適
ON/LLDPE × ガス充填は不適
KOP/CPP △〜○ スナック菓子
KPET/LLDPE △〜○ 菓子、漬物
KON/LLDPE △〜○ コーヒー豆
PET/EVOH/LLDPE 味噌、ハム
OPP/EVOH/PE 削り節
OV/LLDPE 削り節、味噌
PET/AL/LLDPE お茶、コーヒー
透明蒸着PET/LLDPEorCPP 菓子、レトルト
ON/ZX/LLDPE
PET/VMPET/LLDPE ○〜◎ コーヒー

◎:優秀 ○:良好 △:条件によって使用可 ×:不可

 


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